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『ハロプロ兄弟』
「兄ちゃん、モー娘。って興味ある?」
「まぁ、それでもいいや。そのコンサートチケットが一枚余ってるんだけど一緒に行く?」
「なるほど、週末に兄弟でアイドルのコンサートか、楽しそうじゃないか、けど俺今の会社で定年まで頑張りたいって思ってて、それに小さくても慎ましく明るい家庭を築きたいっていうささやかな夢があってさ・・・、へへ馬鹿げてるだろ?でも、それがその悪魔のチケット一枚で踏みにじられちまうって思うと・・・・・」
「どれほどの覚悟だよ。なんか気分悪いわ。まぁいいや、ほか当たるよ」
「ちょっ!待てよ!!」
「イラっとくるからそのモノマネやめろよ。で、なに?」
「お前は昔からそうだ、何でもすぐに諦める」
「だって行かないんだろ、話は終わりだよ」
「誰も行かないとは言ってないぞ。むしろ今では行ってやってもいいとすら思っている」
「ずいぶん偉そうだな」
「それに、今のモームスにはリンリンちゃんが居るもんな」
「奇想天外な決定打だな」
「おっと、リンリンちゃんの悪口はそこまでだ」
「言ってねぇよ、お前のピンポイント爆撃の照準が不可解だっただけだよ」
「ただなぁ行ってもいいんだが、ハロプロのコンサート会場って危ない人達が集まるっていうイメージを具現化した場所だろ」
「そこはせめてイメージだけに留めろや、具現化したとか見たふうな口聞くな。むしろ、実際そんなことないし」
「本当かなぁ、実は俺いままで生きてきてお前のこと信用したためしが無いんだよ」
「今そんなことカミングアウトすんなや。面倒くせぇな。もういいよ、コンサートに来んのがそんなに怖いんだったら、おとなしく公園でバドミントンでもやってろや」
「えっ!リンリンちゃんと公園でバドミントン出来んの!?」
「ちげぇよ!皮肉で言ってんだよ」
「おっと、リンリンちゃんの悪口は」
「言ってねぇよ!」
「まぁ、確かに兄としては普段どんな活動をしているのかを一度は見ておく責任があるのかもしれないしなぁ」
「活動とか大袈裟だろ、別に俺はコンサートに行って盛り上がって楽しんで、ってだけだし」
「お前じゃないよ、リンリンちゃんのだ」
「じゃあ兄としてってなんだよ、すでに脳内妹設定コンプリートかよ、かざぐるまの弥七ばりに先回りしちゃってるじゃねえか」
「そうですけど何か問題でも?」
「問題ってわけじゃないけど、俺の脳内兄妹設定にも兄ちゃんを足さなきゃいけなくなったわ」